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アメリカのスタートアップを一望できるAngel Listがすごすぎる --シリコンバレーの業界地図について--

このサイト(Angel List: https://angel.co/ )、素晴らしすぎるのですが、その魅力をしっかり伝えている日本語記事が見つからなかったので、ちょっと個人的に書いてみます。

 

そもそもAngel Listとは?

Angel Listとは起業家と投資家を結びつけるSNSのようなものだと言われています。今、米国で熱いサービスが網羅されていて、それに伴うディール(投資の実施され具合)も視覚的にわかるようになっている。特に、企業のサービスや資金調達状況、資金調達元(投資家)などが掲載された当該企業の紹介ページに加えて、スタートアップに投資をする投資家側のページも充実していることが特徴で、検索すれば、現在誰がどこに投資しているかが一目で分かっているようになっています。また、企業ページには"JOBS"という項目があり、人材募集がある際は僕らも応募できるようになっています。投資家と起業家を結びつけることに加えて、スタートアップの採用も助けられるようなサイトに仕上がっています。投資家の例で言えば、例えば、アンドリーセン・ホロウィッツの創業者二人やエンジェル投資家として活躍しているLinkedInのリード・ホフマンの投資状況が、検索すればわかるようになっています。

 

その辺りの話は以下の記事に詳しいです。一つ目の記事がAngel Listの大枠について、二つ目の記事がAngel Listのよりディープな魅力について。一体Angel Listが行ったことは何がすごくてどういうインパクトがあるのか、という内容がわかる記事になっています。

 

見ているだけでスタートアップ事情に詳しくなれる「Angel List」が面白い : ライフハッカー[日本版]

Googleが投資する、次世代エンジェル投資プラットフォームAngelList | ハルデザインコンサルティング |
 

これらの記事で書かれていることに加えて僕が強調したいのは、これからスタートアップ界隈に関わろうとしている人に対してのAngel Listの魅力です。これまでの記事で書かれてきた魅力は、<起業家>と<投資家>、つまり、スタートアップの世界にずっぷり浸かった当事者にとっての魅力なんですよね。もちろん、メインターゲットはそこ、かつ、Angel Listのビジネスモデルも彼らが稼働することで成立するものになっているので、それ自体は自然、全く問題ないのですが、それに加えて、まだ本格的に起業とか投資とかに関わっていない、周辺領域の人にも莫大なメリットがあるよ、という話です。そこら辺を以下、書いていきます。

 

1.アメリカには整備された労働市場がない

アメリカには新卒一括採用という制度はなく、日本ほど就活市場・労働市場が整備されていません。例えば、卒業を間近に控えた大学生は、大学のキャリアサポートセンターか時々開かれるジョブフェアのようなイベント、個人的なツテ、後は検索して書類(レジュメとカバーレター)を送りまくる、ということをやります。これを打破する形で生まれてきたのがLinkedIn、アメリカの職探し用SNSです。(こんな言い方したら怒られるかもしれませんが…) LinkedInでは--日本では考えづらいのですが--プロフィールがまるでレジュメのようになっていて、学歴・職歴・実績などが一覧できるようになっています。これを企業のリクルーターは見て、興味がある人材がいたら連絡する、逆に興味があるポジションがあったらこちらから連絡を取る、ということをやります。(僕にも時々連絡が来ます) 

 

つまり、日本の労働市場が新卒一括採用で、決まった期間に企業側も学生側もがっつり準備してめちゃくちゃにマッチングを繰り返すのに対して、アメリカはネットワーク型で個人間のやりとりによって職探しが行われるんですね。

 

ただ、そうなると、有名企業はいいのですが、できたばかりの若い企業についてはどのような企業があるのか、どのような企業が筋がいいのかということがわからず、就職したくても就職するツテがない、という事態が起こります。それは特に日本にいる時は顕著です。アメリカでどんな企業が生まれていて、今どんな企業が熱いのかウォッチし続けるのは結構至難の業です。僕なんかは、TechCrunchに張り付いて日本進出を考えている企業に関する記事が出ないか探し続けるなんてことを、昔はやっていました。

 

それが、Angel Listの登場によって、アメリカスタートアップを一望できるようになりました。闇雲に検索して探しまくらなくても、ワンストップでアメリカの若き労働市場を一覧できるようになったことは、これは非常に大きいことだと思います。

 

2.若い会社の将来性を見極めることは難しい

ただ、ですね、アメリカ(西海岸の一部地域)では「一番優秀な奴は起業、二番目がスタートアップかVCへの就職、それができない奴が大企業に行く」という文化があるほど、スタートアップ界隈は熱いのですが、評判の確立されていない時期にその企業の将来性を判断することは、僕ら素人にはかなり難しいことです。(プロでも血眼になってやっているくらい) なので、ある程度アメリカのスタートアップに詳しくなっても、自分がどんな企業に参加するべきなのかという点が最後までわかりません。

 

自分の場合は、初めは表に出た情報--記事情報や知り合い関係者からの情報--から推測・判断するしかありませんでした。ただ、それだとどうしても推測の精度が落ちます。そこで始めたのが、有名投資家がどこに投資しているか確認する、というものでした。アメリカには有名なVCというのが存在します。また、最近ではY Combinator500 startupsなどのシードアクセラレーターといった、かなり早い段階で資金を突っ込む投資形態も定着してきました。彼らがどこに投資しているのかをチェックするのです。

 

もちろん、彼ら自身が言っているように、彼ら自身もどんな企業が伸びるかはわからないのですが、確率論的に、僕らが判断するよりはよっぽど精度が高いでしょう。そして、就職ランキングのように巷に流布した情報より、特にスタートアップという判断が難しく、なかなか多くの情報が表に出ない業界においては、かなり信頼度の高い情報源であると言えると思います。なので、自分よりも"目の肥えた"人の意見を参考にするという手法は、ある程度有用なのではないかと思っています。

 

前置きが長くなりましたが、この地道な手作業をシステム化して一覧できるようにしてしまったのがAngel Listなんです。Angel Listには様々な投資家が名前を連ねており、彼らの投資遍歴がわかるようになっています。彼らのポートフォリオ、シンジケートのポートフォリオを見れば、大まかなアメリカスタートアップの業界地図がわかるようになっています。もっと細かい情報、深い情報は現地に行って集めればいいんです。

 

3.成長過程にあるスタートアップはマジ熱い

「てか、そんなリスク犯して若い企業に行く意味ってあるの?」っていう質問がくる時もあるのですが、これは僕の経験・個人的見解も含めて、やっぱり成長過程にあるスタートアップは最高に熱いですし--月並みな言葉で嫌いですが--成長幅も大きい気がします。なぜなら、企業がまだ若いので、組織や仕事が定まっておらず、自分から創り上げる部分が大きいですし、企業が成長しているのでどんどん新しい機会が舞い込んできます。なので、自分の成長幅に合わせて新しい機会に飛び込み、倍がけで成長していくことができます。後、成長過程にあるスタートアップは、各フェーズの資金調達や競合の誕生、巨人(Facebookなど)からの働きかけなど、面白いイベントが起こることも多く、そこを経験できることも成長過程にあるスタートアップにジョインすることの醍醐味なのかなと思います。

 

4.(確度高く)ネットワークが広がる

最後は余談になりますが、ここら辺のスタートアップ界隈は結構狭い世界だったりします。つまり、どこかにつながればまたどこかにつながるということが連鎖的に起こります。わかいりやすいところで言えば、カンファレンスに何回か参加すると顔を合わせる人が被りだすということが起こり始めます。なので、早めにそのネットワークのコア部分に食い込むことが大事なんです。だから、Angel Listから確認して、著名VCの出資を受けているところに関わるというのが、副作用的に効いてきたりします。

 

最後に、

このエントリのターゲットは、実は明確です。既に起業して事業を回している人でもなければ、投資する側に回っているプロフェッショナル達でもありません。なんとなく将来起業したいと思っている、なんとなくアメリカ西海岸の成功物語に憧れを抱く、そんな今一歩行動が起こせない青臭い人達に向けて書いてます。こんなこと書くと燃えるかな?笑

 

ただ、そういう人達が確実に存在すると思っています。中学校の時から商売まがいのことをやっていて、気付いたら大学に入って起業していた、その流れで今も、という人も多く知っていますし、一度勤め始めてから日本の将来に不安を感じて、意を決してものすごい勢いで事業を立ち上げていく凄腕の人達も知っています。でも、それとは別に、一歩踏み出そうか悩んでるけれども、実はやりたい、という密かな熱い思いを抱いた将来のビジョナリーの卵がいることも知っています。

 

彼らがより孵化しやすい環境を、ということで今回のエントリを書いてみました。より挑戦のハードルを下げて、挑戦から帰還する道筋も残して、そういうゲートキーパー的な役割を果たせないかと思って書いた記事です。なぜなら、そういう裾野が広がることが今の日本の経済・新産業創出に必要なことで、そのコストは社会的に負担する必要があると考えているからです。若い人の門出を応援しましょう!、という。

 

しかし、このエントリには致命的な欠陥があります。全体的に「お客さん」感覚で書かれているということです。創業間もない企業には余裕がありません。創業期は修羅場の連続です。無垢な若者が興味本位でやっていける世界ではありません。なので、何かを得られるという意識で来るなら帰ってくれ、というのが本音だと思います。

 

だから--一見矛盾するんですが--入り口を広げること、入り口のハードルを下げること、「お客さん」感覚ではなく、自ら創り上げる気概のある人を多く飛び出させること。この両者を微妙なバランスを保ってやっていければなと思っている次第です。

 

いやー、最後しゃべりすぎたな。

 

ではでは。