日々の気付きと時々、振り返り

しがないセールスエンジニアが日々考えてることをまとめたもの。

複数パターンの起業家を見て、考えたこと

こちらの記事を読んでいて思うところがあったので、書いてみます。様々な起業家がそれぞれの経験から自分の意見を発信しているので、各所にエッセンスがあって、すごく良い内容に仕上がっています。是非読んでみてください。

 

nanapiもコーチユナイテッドもたじたじ!? CA藤田晋氏が、若手起業家たちのホンネに切り込む! | ログミー[o_O]

 

 

思考の練度の違い

まず、記事全体を読んでいて感じたのが、登壇者の発言内容からその人がどれだけしっかりと考えているか、いわゆる「思考の練度」が類推できる、ということです。実際に記事を読んでみればわかる方も多いと思うのですが、「あ、この意見はしっかりと考えられているな」という発言と「まだあまり考えられておらず、その場で考えながら話しているな」という発言が、比較的明確に区別できるのではないかと思います。もちろんそれには様々な要因が絡むので一概には言えませんが、やはり練度の高い発言--発言内容がシンプルで、初めから終わりまで話が前後することがなく、聞き手が無理なく飲み込める内容であること--の方が、行動にもキレが生まれますし、機動力が高まりますし、失敗しても高速、かつ、有効に修正できるのではないかと思います。

 

で、この思考の練度が何によって規定されるといいますと、まず、その人の興味・関心。当然のことですが、その人が興味・関心があることは、日常的に情報を集め、あれこれ考えているので、突然聞かれても、比較的質の高い受け答えができます。次に、興味・関心に紐づくことなのですが、その人の日常的な思考態度、というものが関係してきます。要は、普段からどれだけ考え抜いているか、より正確に言えば考え抜いている癖があるか、というのが発言の質に、クリアに影響します。もっと言えば、どこまで情報を集め、考え、疑問を解消すれば「考えた」ということになるのかが人によって違い、その水準が高ければ高いほど、全体的な思考の練度は高まるのです。そして、最後に、その人の基礎的な能力があります。着眼点、思考力、知的体力。要は、いかにゴールに近いところからスタートを切れるか、いかに最短距離を見つけ、走れるか、どれだけ長く走れるか、という素養が思考の練度を左右することになります。

 

ただ、少し補足するとすれば、事業を成功させるという意味では、思考の練度は1つの判断材料でしかないため--思考以外にも様々な要因が事業の成功には関わる--それだけを取り上げて、こいつはだめだと判断するのは時期尚早だということです。その時々の調子もありますし。

 

社会起業家と事業起業家

次に、社会起業家と事業起業家についてです。「事業起業家」という言葉ないと思うのですが、社会起業家と対応して、便宜的にこういった言葉を使っています。両者に明確な区別はないとは思うのですが、一応分類するとすれば、何かしらの社会課題を解決するために事業を立ち上げるのが社会起業家、事業それ自体のために事業を立ち上げるのが事業起業家と理解しています。そして、両者微妙に、事業に対する姿勢や好みが異なるなぁ、というのが今回の記事を呼んだ時の印象です。

 

今回の記事の白木さんのように、社会起業家は、どちらか言えば夢・理念・展望という部分に重きを置きがちで、事業性--事業計画・経営戦略・資本政策など--については、比較的無頓着なところがあります。先ほどの言葉を使えば、この部分の思考の練度は低い、ということになります。一方の、事業起業家は、どちらかと言えば、自身の野望からスタートしがちで、事業も似たようなものが出揃い、比較的稼ぎやすく、今一番ホットな部分に集中しがちだな、という印象を受けます。その分、事業の成功確率は、恐らく高く見積もられ、全く収益が上がらないということはなさそうだな、という印象を受けます。

 

言うまでもなく、このどちらも大切で、企業は須らく社会に貢献すべきだとは思うのですが、今回感じたこととしては、この両者を敢えて切り分けて考えたほうが考えやすいのではないかということです。つまり、理念は理念として存在するけれども、それを実現するための事業は、ある種理念と切り分けて、事業は事業として成立すると。白木さんの言葉に「私の夢に出資して下さい」というものがありましたが、極論夢なんてなくても投資家が出資したいと思う。それくらいが健全なのかなぁと思います。

 

もちろん、エンジェル的な投資家は必要ですし、初めはそれほど将来性を見込める事業を作れるとも思いませんので、本当に投資的な意味で出資することは大切だと思うのですが、特に社会起業は課題解決の手法をビジネスのスキームに乗っけてマネタイズするのが難しいので、やはり最終的にはビジネスとして成立するのがよろしかろうと。そういう意味では、Amazonなんかはすごくバランスが良いですよね。今は投資に次ぐ投資で、赤字すれすれですが、実現したい社会もわかりやすいですし、ビジネスとしてもしっかりしています(価格戦略的に極端に低い利益率を敷いていますが)。そういう意味ではGoogleは特殊で、あれほど理念を追求しながら凄まじい利益をあげているのはものすごいと思いますね。極めて良質なサービスを生み出し、広くユーザーに愛され、それに適したビジネスのスキームがピタリとはまると、これほどまでに成功するのかといういい例だと思います。後、人材が極めて優秀ですよね。

 

起業の時期について

最後に、起業の時期についてぼんやり思ったことを。やはり個人的には起業はあまり速くに始めないほうがいいのだろなぁとは思います。というより、あまりイメージがわかない内から始めると痛い目に会う、という方が正確な表現かもしれません。なんとなくですが、あまり早く事業を始めたが故に、比較的ビジネス経験を積んだ人なら見落とすことがない、というより意識せずにもやっていることも、早くから起業した人にとっては全く気が付かないことで、それでいて一度始めてしまうと事業はどんどん前に進むので、取り返しがつかないことになる。一度解体して、再度出発するというハードランディングを強いられる結末になるのかなぁと思います。これは、言ってしまうと、ウィルゲートの小島さんを意識して書いているのですが。一方で、若くに起業して成功した人もいます。孫正義さんもそうですし、堀江貴文さんもそうです。登壇しているnanapiのけんすうさんもそうですね。彼らは違うじゃないかと、そういう話になるんですけど、彼らの場合は、恐らくですが、それほど起業を意識していない。目の前の仕事、目の前の問題に自分なりに取り組んでいる内に、なんとなく売れた、ビジネスの水準を超えてしまったというのが正確な所で、何もない所から、じゃあ起業しよう、ということになったわけではないと思うんですよね。要は、人生とかキャリアが、急にジャンプアップするわけではなく、非連続ではなく連続的で、自然流れだったと。こういう場合じゃないとうまくいかない、少なくとも一度は痛い目に会う。そういうことなんじゃないかと思うんです。これは自分の経験からも言えることなんですが。だから、とにかく目の前のことを頑張る。それでいて圧倒的な水準を達成する。そして、その先の延長線上に起業という選択肢が浮かぶ。それくらいでいいんじゃないかと思います。サイバーの藤田さんも新卒初年度から5000万円稼いでますからね。全然一人でやっていけますよね。

 

最後に、

全然関係のない話なんですが、「札幌からの機内で、ウィルゲートの本を全て読んできたんですけど」という藤田さんの姿勢は流石だなと思いました。というより、やっぱりそういうのが当たり前なんですね。トップ営業マンの面影を見た気がします。相当に準備している。それが分かるほど、質の高いモデレーションですし、うまい人がやるとこうなるのか、と感じ入りました。もちろん藤田さんの経験があるからこそ、発せられる言葉の数々もあるのですが。

 

ではでは。