自己認識を更新すること - 精神構造から見直す自己認識
さて、突然ですが、最近自分の精神面を改めて見つめ直す機会がありました。実はかねてから自分の精神面に課題を感じており、具体的には、いわゆるメンタルが弱い、という状況にありました。ただ、少し真剣に自分を見つめ直す機会があり、個人的に発見も多く、顕著な成果を挙げたので、個人的な経験を少しまとめてみたいと思います。
自分を客観視することの難しさ
先に結論を書いてしまうと、人には基本的に「自動思考」と呼ばれる思考の癖があるようです。これは受け止め方的な話で、例えば、同じ現象に遭遇しても人によって捉え方が変わったりするのはこれも作用しています(あまりいい例ではないかもしれないのですが、よくあるグラスにワインが半分注がれていて「まだ半分ある」と思う人と「もう半分しかない」と思う人の違いに近いかもしれません)。
自動思考とは認知の形の一つで、何かの出来事が起きた時、瞬間的に浮かぶ思考のことを言います。この自動思考によって、感情や行動が変化していきます。
自動思考のもとになっているのが「スキーマ」と呼ばれるものです。「認知の構造」のようなもので、普段意識するものではないとされています。例えば「自分には価値がない」というスキーマを持っている場合、自動思考にも歪みや偏りが起きやすくなります。
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私の発見は以下の 3 つでした:
- 自分の思考の癖自体にあまり意識をむけたことがなかったこと
- 自分の思考の癖が波及的に多分野に影響を与えていたこと
- 自分がどのような思考の癖を持っているのか、客観的に認識できていなかったこと
これらが原因で具体的に何を改善すべきかイメージを持てないまま「精神が弱い」「やる気が出ない」「身体的不調が発現する(e.g. 微熱)」という問題に対して悶々と過ごしていました。解決の鍵は状況の構造を深いレベルで把握し、対処することでした。
では、具体的にどのような思考の癖があったのか
素人診断ですが、かつての私には自律神経の不調と思われるような症状が頻繁に発生していました。具体的には、やる気の減少であったり、気だるさ、そして、時には実際に微熱が発生しました。これらはどうやら交感神経と副交感神経と呼ばれる器官に関係があるようで、ざっくりいうと交感神経が「オン」の状態(戦闘状態)、副交感神経が「オフ」の状態(休息状態)に当たるようです。
私の場合は、常に交感神経が「オン」になるような生活をしていたらしく、体が体内物質的に休まることなく、いわゆる異常事態として、身体的な不調につながっていたという自己認識に落ち着きました。実際に当時の私の生活はストレス負荷が高く、また、私の性格自体も過敏なものでした(異国に移住し、言語・文化・人間関係的ハンデに直面し、解雇の不安を抱えながら、私なりに一生懸命、試行錯誤していました)。
そして、自律神経の失調に陥る人には一定の傾向(認知の歪み)があるようです。
- 極端な一般化
- 自己関連づけ
- 過大評価・過小評価
- 自分で実現してしまう予言
- 白黒思考
- 根拠のない決めつけ
- 部分的焦点つけ
- べき思考
- 情緒的な理由づけ
- 自分で実現してしまう予言
この中で特に私に当てはまったのが上の 4 つ「極端な一般化」「自己関連づけ」「過大評価・過小評価」「自分で実現してしまう予言」です。
極端な一般化とは、例えば、一つの出来事を人生レベルで捉えてしまったりすることです。具体的には、例えば、就活で第一志望の会社に落ちてしまった時に「ああもう人生終わりだ」と思ってしまうようなものです。気持ちは痛いほどわかりますが、客観的に見れば、人生はもっと複線的ですし、もっといえば、将来その会社に転職することも不可能ではないかもしれません。
自己関連づけとは、何でもかんでも自分のせいではないかと思ってしまうことです。例えば「あ!」と誰かが叫んだ時に(やばい、自分何かしたかな)と思ってしまうような心理の働きです。これ自体は一般的な感情だと思いますが、あまりに極端だったり、心配の強度が高すぎると、必要以上に精神的な疲労を蓄積してしまいます。
過大評価・過小評価も、大げさに一般化すれば、良いことは忘れ、悪いことばかり注目してしまうイメージです。振り返れば、悪い結末と同じくらい良い結末もあったはずなのに、なぜか悪いことばかり覚えているため、将来的な予測もネガティブなものになりがちです。なんだかとても疲れそうな人生ですよね。
これと関連して、自己実現型予言も「きっとこうなる」と悪い予測をして、実際に予言を実現させて「ほらやっぱり」と否定的な構えを自ら強化していくことになります。どうでしょうか、皆さんにも思い当たるフシがありますか?ないことを祈りますが、私は恥ずかしながらこのような状態でした。
首尾一貫感覚(Sense of Coherence)
上記の自己認識に加えて、自分に役に立ったのは「首尾一貫感覚」というフレームワークでした。首尾一貫感覚とは医療社会学者のアーロン・アントノフスキーによって提唱された概念です。彼はユダヤ人強制収容所から生還した人の中でも 30% の、精神に不調がない人に着目しました。「あれだけ過酷な環境にいながら健康な精神を保てたのはなぜなのか」。そしてたどり着いた結論が首尾一貫感覚でした。
これは個人的にはかなり画期的な発見でした。その理由も:
- なんとなく実践していたが、改めて整理されると、その通りだと感じた
- 周りの打たれ強い人にはこの傾向がある
- 周りの打たれ弱い人には真逆の傾向がある
例えば、何か不測の事態があると、自分は頭の中がそれでいっぱいになり、ストレスを強く感じました。ただ、ほとんどのことは分解して一つ一つ対処し(把握可能感)時間をかければなんとかなります(処理可能感)。実際に自由に休暇を取ることは難しいかもしれませんが、少しの間我慢して、その後、休息期間を設ければ、それほど大変でもないかもしれません。
この、問題を適切に分解して、難易度を落とすという問題解決能力と、それに対する適切なマインドセットと柔軟さ(e.g. 1 日で終わらないなら 3 日かけよう)は、私のこれまでの人生経験とも合致し、明日からでも使えるような効果的なフレームワークでした。
実際のその後
具体的には「基本的になんとかなるだろう(これまでもなってきたし)」というポジティブなマインドセットを持ちながら、未知の問題に対してもそのまま受け止めず、一旦引いて、どういう問題なんだろう、と考えてから、取り組んだり、取り組まなかったりするようになりました。
また、どこまで医学的・科学的なアプローチかはわかりませんが、疲れてきたら「交感神経を使いすぎたんだな」と思い「副交感神経に切り替えよう」と仕事などのことを忘れ、意識的にスイッチを切るよう心がけました。すると、重たい気持ちは消え、身体的不調が発現することもなくなりました。ただ、休む時間は増えたので、今後は適切なバランスや自分の限界を見極めようと思っています。少しでも参考になりましたら幸いです。
ではでは。