日々の気付きと時々、振り返り

しがないセールスエンジニアが日々考えてることをまとめたもの。

価値を生むお金の使い方と、そうでないお金の使い方 --Googleの福利厚生は本当に必要か財務担当者の目線で考えてみる--

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自由な社風について

ここ最近、シリコンバレーのスタートアップを初め、なんというか自由で楽しげな社風の会社が増えてきた。その最たる例がGoogleであり、Googleはその一つの例に過ぎないものの、ここシリコンバレーの会社ではほとんどがそういう傾向にある。例えば、フリーランチに始まり、豊富な飲み物・スナック類、果てには卓球台など、遊具すら提供する会社もある。ちょっと日本の大企業からすると信じられないくらいだ。(実際に勤務する友人もそういうことを言っていた。)こうした傾向は、一つの流行として面白く、また、働く側として大変嬉しいものであるが、翻って企業の財務担当者の視点からするとどうであろうか。財務担当者というと大げさだが、帳簿を管理する身、もっと言えば「ねぇ、それって無駄遣いじゃないの?うちってそんな余裕あったっけ」という疑問に対してどう応えるか、そういう話である。そして、この疑問に対して一つの答えを提示する面白い経験をしたので紹介したいと思う。

 

シリコンバレーの福利厚生

あまり詳しくは書けないのだが、今自分はシリコンバレーに拠点を構える若い企業、いわゆるスタートアップと呼ばれる企業で、担当の業務の一つとして経理・会計・財務に関わっている。今の会社も例に漏れず、充実とまでは言わないものの、それなりのサービスを社員に提供している。フリーランチやスナック、種類は限られているとはいえドリンクも。その他、様々。働き始めた当初は「なんて社員想いの良い会社なんだ」と思ったものだが、それも長く働いていると考えが変わってくる。元々自分が倹約志向があるということもあり、徐々に自分がオフィス・マネージャーとして、そして、財務担当者として、社内の環境を整備していくことに違和感を覚え始める。「果たしてこんなにお金を使ってしまっていいのだろうか」財務担当者である。自社の帳簿もわかる。日々のお金の出入りもわかる。そうした時に、全く必要ないとは言わないとはいえ、他にお金の使い方があるのではないかと考えることも多々あった。しかも、同時に自分がオフィス・マネージャー的な役割を果たしていたため、そうした福利厚生を充実させるのも自分の役割だったのである。充実させればさせるほど皆は喜ぶけど、果たして会社のためになっているのだろうか。そんな思いを抱えながら過ごす日々が続いた。

 

ある日の出来事

そんな折である。オフィスの移転など、様々なイレギュラーな出来事が連なり、ドリンクの補充が途切れることがあった。その時にこうした福利厚生の持つ効用に気付かされた。ドリンクの補充が遅れた際に何が生じたかといえば、なんとわざわざドリンクを外まで買いに行くという事態が生じたのだ。勤務時間中に何をやってるんだとか、わざわざ外に行って買いに行くほどのものかと思われる方もいるかもしれないが、実はそこが今回の話の一つの肝でもある。

 

一旦、その話は置いておくとして、ドリンクなどの福利厚生が途絶えるとどういうことになるかといえば、簡単に言えば不満がたまり、皆が我慢を強いられ、生産性が落ちる。結局、皆人間であり、朝は眠いし、3時のおやつにはお腹が減るし、1日の終りには集中力が切れるのだ。これを野放しにすると、皆口には出さないとはいえ、心のなかで不満を抱えつつ、なんとか自分の欲求と折り合いをつけて精を出す。しかし、それにも限界がある。眠ければ頭も働かない。だからこそ、眠気対策にコーヒーやエナジードリンクを用意して、空腹対策に軽食を用意し、集中力対策に様々なドリンク、そして、リフレッシュのための部屋を設けるのだ。実は無駄遣いに見えて、合理的な計算の下、福利厚生は準備されていたということになる。(実際は計算の下というより、最も生産性が高い状態を模索していたら、こうした結果に落ち着いたと言ったほうが近いだろう)

 

そして、である。逆にそうしたドリンク類などを途切らせてわざわざ外に買いに行くはめになると、それこそ時間がかかり、トータルで見て生産性が落ちる。ここに先ほど少し触れた、肝がある。つまり、この買いに行く時間分の生産量と買いに行く時間をセーブするための飲食費を比べた時に前者の方が大きい場合、実は福利厚生を充実させる方が経済的にも合理的な選択になり、社員の生産性が高ければ高いほど福利厚生を充実させ、彼らのパフォーマンスを最大化させた方が賢い選択になると、そういうことである。そう考えると確かにGoogleの手法も合理的に思えてくる。恐らく彼らも初めはそういうことだけを考えていたわけではないと思うが。

 

少し話が脇道にそれるが、ここシリコンバレーではそうした話が、実は結構ある。そうした話というのは、社員が極めて優秀で、高い生産性を誇るため(そして、セルフマネジメント能力も極めて高いため)通常のマネジメント手法からすると驚くような方法が、実は最適な方法であるということが多々あるのである。それにはシリコンバレー労働市場事情の問題も絡むのだが、その辺りはそうした実例も含めて、また改めて書いてみたいと思う。(彼らの勤務スタイルなどは初めは耳を疑うほどだ)

 

結局、インプットとアウトプットの関係が大事

話をまとめると、福利厚生が無駄遣いか無駄遣いではないかという話にはあまり意味がなく、結局のところお金の使い方、お金をどのように使い、それに対してどのようなリターンを期待できるかが大事であり、今回の場合、時間に対するリターンが極めて大きい人達だからこそ、時間、そして、生産性こそが最大限に希少な資源であり、いかにそれを守り増やすかというのが大事になると、そういう話であった。これはその他、一般的なお金の使い方にも言えるのではないだろうか。とにかく、福利厚生は大事で、これで明日から心置きなく皆がのびのび働ける環境を作ることができる。そして、自分もドリンクやスナックにありつくことができる(笑)しかし、それにしても、今回のケースは自分の働き方に影響を与えるほどの出来事であった。シリコンバレーで働いていると、これまでの自分の常識が壊され、改めて自分の働き方を考えさせられるので楽しい。まだまだ改善していけそうだ。

 

最後に、

今回はひょんなことからGoogleの福利厚生にまで話が及んでしまった。言ってしまえばちょっと勤務時間中にスタバに飲み物を買いにいってみただけである。それがケチな自分には時間的にも、経済的にも、そして、会社の成果的にもとても大きなショックで考えさせられたと、そういう話である。

ただ、意外なところから面白い発見も見られたような気がして、今回エントリとしてまとめてみた。少しでも何か気づきがあれば幸いである。

 

ではでは。

 

photo by Denis Cappellin