日々の気付きと時々、振り返り

しがないセールスエンジニアが日々考えてることをまとめたもの。

Whyから始めること --夢を信じることの罠--

こちらの動画を見ていて思うことがあったので書いてみます。

リーダーはどのように人を感化するか、という動画です。


Simon Sinek: How great leaders inspire action: TED ...

whyから始めること

成功するリーダーは、what→how→whyではなく、why→how→whatという順番で考えるとSimon氏は言います。リーダーは自分の信じるところを示し、人々は自分の信念を貫くためにリーダーをフォローする、と。

 

自分の信念を持つこと、ヴィジョンを掲げること、理念を尊重すること。これらの重要性は多くの人が知っています。じゃあ、なぜそれができていないのかというのが今回の話です。

 

価値定義の難しさ

まず、価値を定義することの難しさがあります。理念が有効に機能するには理念が同時に価値を表している必要がありますが、この具体と抽象の両方を具有することはとても難しいことです。googleの場合、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を使命に掲げていますが、この理念は同時に人々への提供価値もうまく表現しています。これがなかなかできません。(かつて考えた理念に「異なる境遇の人々が交錯する機会を作る」というものがありましたが、イマイチピンと来ないお題目になってしまいました。)

 

プロセスとファンクションを考える難しさ

次に、理念を掲げても実現可能なスキームを構築できないという問題があります。具体的には、低コストで実現可能、かつ、収益が上がるモデル、価値提供者と価値享受者、提供価値が明確に定義されたフレームワークが構築できない場合があります。農家と購入者である家庭がある場合、農家は農作物を家庭に提供することで対価を得ると考えられます。しかし、登場するプレイヤーが増え、提供価値が無形になりつつある今、このモデルを考えること自体が難しくなっています。

 

その根本の原因

これらの裏には、抽象的思考は誰にでも出来るものではないという背景があります。漠然とした概念を多層的に分解し、言語化、構造化できるようになるには訓練が必要です。最終的な製品をデザインして設計図を描く部分が一番難しく、マニュアルに則ることは出来ても、マニュアルを作ることはなかなかできることではありません。自分の振る舞いを抽象化し、グルーピングし、ラベリングする一連の能力を修得するにはそれ相応の訓練が必要です。

 

対策

一番本質的な解決策は抽象的な思考力を身につけることです。何もないところから製品をデザインして創りあげる経験を何度も積むことで徐々に感覚が掴めてきます。他にも実験をデザインしたり、法律を噛み砕いたり、大部な情報を階層的に理解・収納する努力をすることである種の型が身についてきます。

 

次にできることとしては、真似することです。人の思考を拝借することで思考の難易度を下げることが出来ます。ジョブズのプレゼンにもありましたが、彼はハードウェアに束縛されない(携帯電話はボタンの種類、配置が固定的)ソフトウェアを作るためにパソコンを参考にしました。既に存在する解決策を引っ張ってくることで新たなソリューションを組み立てるやり方と言えます。

 

最後にできることは、待つことです。待ちの姿勢にも2種類あります。考えることをやめることとアイデアに出会う瞬間を待つことです。たくさんたくさん考えて、それでも何も思いつかない。そんな時に考えることをやめて散歩でもしているとアイデアがふってくる。これが1つ目の待ちです。これとは別に、誰かが良いアイデアを考案してくれるのを待つ方法があります。かつてのゼロック社には世界最先端の研究をするパロアルト研究所という機関がありました。この研究所を訪問したジョブズはそこで目にしたGUIに夢中になりPCに組み込んだという逸話があります。これがPCを革命的製品にまで仕立てあげました。非常に機会的、セレンディピティに溢れた手法です。

 

最後に、

一人でいる時間と組織に所属する時間、何が違うのだろうかと考えた時に、既定の仕事があるか否かが大きいと理解しました。どれほど初期のベンチャーでも、創業者がいて創業者の掲げる理念があり、その理念の枠内で仕事を考えることになります。この枠組、思考の制限がないとなかなかアイデアを生むことは難しいんだろうなぁと思いました。

 

その組織人と個人の溝、なぜ自分で仕事を作れないんだろうという謎を解明することで、自覚的に成長・前進できる思考環境を整えるために今回のエントリを書いてみました。

 

ではでは。